禍保護の実装

供給が追いつかずコロナ禍で急騰する実装石の販売価格
これには虐待用に実装石を飼っていた人間も
純粋にペットとして飼っていた人間も飛びついた
自らの飼い実装に仔を産ませて売り捌くのだ
無論鳥獣の販売許可など得ていない素人である
多くはネットオークションなどで隠語を使い取引されることとなった
配送方法も瓶詰めにしたり真空パックにしたり冷凍便にしたりと多種多様であった

しかし取引が流行りだした当初は強制妊娠により無理矢理生み出された仔が多かったため
どの配送方法でも買い手の手元に着く頃には
仔実装が衰弱しきっているか既に事切れていることが多かった
そのため取引に低評価がつくことが多く、これに困った売り手側は
より健康で丈夫な多くの仔実装を得るため親実装の状態を過保護なまでに優遇、管理するという手法をとった

ある家庭では
「さぁ今日もおもちゃをいっぱい買ってきたぞミドリ」
「お部屋でおいしいものをたっぷり食べていっぱい赤ちゃん産んでねぇ~」
「デッププン。これまでの待遇には常々疑問を持ってたデスゥ。
 誰が支配者なのかようやくわかったようデス」
またある家では
「デデェ…もうほんとにひどい事しないデスゥ…?」
「ああナナシ、これからはクソなんて喰わなくていいぞ。それよりしっかり丈夫な仔を産んでくれ。
仔が大きくなったらそいつも仔を産んでいい」
「これはキセキデス…。どうかいつまでも続きますように……」
といった次第であった

理不尽なまでに愛され生の絶頂を極めた実装石たち
厳しい躾をうけた血統書つき飼い実装であっても
日が経つに連れ自身の立場を勘違いし増長するのは仕方の無いことであった
しかしこの栄華もわずか数ヶ月で終焉を迎えることになる
増えすぎた無認可ブリーダーによって供給過多気味になったところに
日本での需要を察知した海外から実装石の大量輸出が始まり価格が急速に下落
それにともない実装石たちの待遇も元に戻るどころか
ブリーダーたちの溜まりに溜まった不満や怒りを受ける立場となった


ある場所では
ボチャン!ドボドボド…
「テチャーーッ?」「テェップ!」「テェェーテプ……」
「デェ…ップ!なんっで!?海の見えブプァッ…デストランに…って!」
「ごめんねぇレストランなんて嘘なのよ。
 あなたたちの食費もバカにならないからもう飼えないの」
「海はちゃんと見えるだろミドリ?まぁむしろ海の中だけど。
 しかし騒がずに車に乗ってくれてよかった」
「あぁーせいせいした。
 うちのミドリがあんなクソムシになるなんて思ってもみなかったわよ」
「さっさと帰って家を掃除しなきゃなぁ。じゃあなミドリ。達者でな」
「まっ…て!ワタシいいこになる…デスゥ!ワタシだけでもっ助け…デッップ……」
ブクブクブク……


またある家では
「デジャアアアッ!!クソニンゲン、なんてことを言うデス!」
「ム、ムスメちゃん、やめるデス。逆らったらダメデスゥ」
「だからもういらないんだよガキは。
 当分の間はこの増えた仔がお前らの餌だ」
「喰うわけないデジャア!オマエこそワタシのクソでも喰うデズゥ!」
「クソ投げやがったなコイツ…。おいナナシ、クソ投げの罰はなんだっけなぁ?」
「はいデス…。ウンチ投げたらミキサー風呂の刑デスゥ…」
「よしよし覚えてたな。特別にこのクソムシが産んだ仔も一緒に風呂に入れてやる。
 ナナシ、そいつ捕まえてろ」
「な…なんデス、ミキサーって?マ、ママやめるデス。やめろ、近づくなニンゲン!」
「なにちょっと下半身がジュースになるだけだ…。
いや仔が一緒に入ったジュースを飲ませてやるか。一石二鳥だな」
「デ、デ、デジャアアアアーーー!」

国内のいたるところでこのような場面が見られ
大量の捨て実装に遺骸の不法投棄など
人の手によって増えすぎた実装石は以前とは別の形で社会問題となった