ウジちゃん夢に駆ける

俺と一緒に見ていた競馬番組に影響されたのか
飼っているウジちゃんがこんなことを言い出した
「ウジちゃんもおウマさんみたいにはしりたいレフ!」
鼻息荒く短い手足をバタつかせ訴えかけてくる
ウジちゃんの熱意に負けた俺は
とりあえずストローを4つに切り分け、ウジちゃんの手足に装着させてみた
「すごいレフ!見えるけしきがちがうレフ!」
興奮しながら一歩踏み出そうとすると、バランスを崩して床に顔を打ち付けてしまった
「レフィィ…」
「初めて竹馬に乗ったようなものだからなぁ。しかし私にいい考えがある!」
何を隠そう外科手術の天才の俺はウジちゃんに骨延長手術を行うことにした


数週間後、そこにはすらりと伸びた手足を持つウジちゃんの姿が!
「すごいレフ!まるでおウマさんレフ!」
激痛に耐え続けたウジちゃんは自信に満ち溢れた顔をしていた
蛆実装の有るのか無いのかわからないようなか細い骨を延長していく作業は
まさに骨の折れる仕事と言っても過言ではなかった
「自分の足ならバランスも取りやすいだろう。では偉大なる一歩を踏みしめたまえ」
俺の声に応じてウジちゃんが足を上げた瞬間
「レピャアアアア!?」
自身の重さに耐え切れずウジちゃんの足はすべてあらぬ方向へと折れ曲がった
「ウ、ウジちゃん…あきらめないレフ!」
足は折れてもウジちゃんの心は折れてはいないようだ
「私にいい考えがある!しばしの間、休んでいたまえ」
ウジちゃんは怪我の治療に数週間は必要だろう
俺は早速作業に取り掛かった


数週間後、そこには補助器具を手足に付けたウジちゃんの姿が!
何を隠そう俺はプラモデル改造の天才だ
ウジちゃんの手足をプラモの中に通しつつ
ひ弱な筋力でも動かせるようにすることくらい造作も無い
ウジちゃんの骨に人工関節を加えることにも成功した
「すごいレフ!ちゃんとはしれるレフ!いたくもないレフー!」
部屋の中を颯爽と走り回るウジちゃんを見ると苦労も報われる
「かがみが見たいレフ!ごしゅじんサマ見せてほしいレフ!」
「うむ、存分に見るといい」
せがむウジちゃんの前に卓上ミラーを置いてやる


さぞ喜ぶだろうと思ったが、鏡に映った自身を見たままウジちゃんは一言も発しなかった
「どうした、ウジちゃん?」
返答も無く、ただ立ち尽くしているように見えたが
その瞳にはもう先ほどまでの輝きが失われていた
「し、死んでる…?」
自分の想像していた姿とかけ離れた異形に衝撃を受けたのだろうか
きっと華麗かつ豪壮に走る競走馬のような姿を想像していたのだろう
あれだけのタフな精神を持ってしても受け入れることが出来なかったとは…
良かれと思ってやったことが裏目に出たことを俺は悔やんでも悔やみきれなかった
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「それから私は蛆実装といえど補助器具の見た目には気を使うという教訓を得たのです。
 その経験を生かして会社を立ち上げ、今では我が社は実装石用の補助器具メーカーとして
 国内シェア90%を誇りますが、あのウジちゃんには感謝しきれない。
 今でもあの子が天馬のように駆ける姿を夢に見ることがありますよ」