玩具改造~アスレチック~

賢明なとしあきなら覚えているだろうか
己の指先に神経を集中するあまり多くの時間を奪っていった“アスレチックゲーム”というものを…
ステージに備え付けられたボタンやレバーを駆使し、小さな鉄球を操って
ギミック満載のコースの先にあるゴールを目指すのがこのゲームのルールだ
これも昭和に生まれたアナログゲームだが、令和になって復活したという今も変わらず人気のおもちゃだ
前回までは仔実装や成体実装を遊ぶ対象にしてきたが、今回は蛆実装に遊んでもらおうと改造してみた
とはいえ割りと大きいものなので、持ち運びはせず公園には蛆実装だけを調達しに手ぶらで訪れた
公園に入るなり小汚い一匹の野良実装が駆け寄ってきて、威勢よく何かを訴えてくる

何事かと翻訳アプリを起動し話を聞いてみると
《さぁ今度のゲームはなんデス?こっちは元気なガキがいっぱいデス。準備万端というヤツデスゥ!》
どうやら前回前々回と負けに負けた、あの野良のようだ
「あー…今日は仔実装には用がないんだ。むしろ今お前が喰ってる蛆ちゃんに用があったんだが」
愕然とした顔で野良実装は手に持っていた蛆実装の残骸をポトリと地面に落とした
何かショックだったのだろうか、身動きひとつしない野良実装の背中の奥に
住処と思われるダンボールが見え、中には干からびた禿裸の中実装を貪る何匹もの仔実装がいた
特に興味を引くものでもなかったので、野良実装を無視し別の実装石を探すことにする

無事、別の野良実装から駄菓子と引き換えに健康な蛆実装を手に入れ帰宅
《はやくあそびたいレフー。うじちゃんうんどうはとくいレフー》
と早くもやる気を見せる蛆ちゃん
よーし、では早速スタート位置に蛆ちゃんを置いて…そうだ、どうせなら動画も撮ろう
手元に集中したいのでカメラを三脚にセットしてゲームスタートだ!
まずは第一関門、グラグラ橋
これはボタン操作で橋の角度を変えてボールを前に進めるギミックだが
《レッフレッフ。のぼれないレフー》
やはり蛆ちゃんの短い手足では坂を登れないのでプレイヤーの協力が必要になる
うまく角度を変えてやり次の橋へ移らせ、また同じように角度を変える
《すべり台みたいレフ。らくちんレフー♪》
と蛆ちゃんもご機嫌で橋をクリアー
続いて第二関門、これはクレーンに付いた磁石で鉄球を運ぶというものだが
当然蛆ちゃんは磁石にくっ付くはずもないので、足場をぶら下げて蛆ちゃんを乗せるという形にした
「しっかり乗ったな?じゃあ運ぶから動くんじゃないぞ」
なかなか頭がいいのか、蛆ちゃんは言いつけをしっかり守りこれをクリアー
「次のワニワニ池はワニの代わりに画鋲が置いてあるぞ!落ちると危険だ!」
《こわいレフ…。でもうじちゃんは止まることをしらないレフ!》
「お次はユラユラボード…おっとそっちは出口じゃ…あー」
《レェェ…落ちちゃったレフ…。もういっかいレフ!》
「いい根性だ。じゃあもう一度、最初からだ!」
《レッフン!》
そんなこんなで蛆ちゃんと俺は良きパートナーとして次々とアスレチックコースをクリアー
「よし…これが最後のアスレチックだが…。下手すると蛆ちゃんは吹き飛ばされることになる」
《レフー。うじちゃんはやりとげるレフ。うじちゃんはニンゲンさんをしんじるレフ》
このカンカンハンマーは磁石にくっ付けた鉄球をゴールに設置されたゴングにブチ当てるという
最後の最後でいきなり随分と乱暴なギミックなわけだ
さすがに金属製のゴングに蛆ちゃんをぶつければ死は免れないので
ゴングは取り外し、代わりにゴールのご褒美兼クッションとして実装石用のおやつゼリーを置いてある
それでもこのギミックは勢いがありすぎると蛆ちゃんがコース外に投げ出されたり
ゴールの枠に衝突したりする危険性が高いのだ
「しっかりハンマーにしがみつくんだぞ蛆ちゃん。1、2の…3!」
俺がボタンを押すと同時に弾かれたように弧を描くカンカンハンマー
一瞬のうちに、蛆ちゃんはゼリーの上に叩きつけられた
《い、いたいレフ…。でも、やったレフ?》
「おめでとう蛆ちゃん!そのゼリーは全部、蛆ちゃんのものだ!」
こうして数時間に及ぶ激闘を繰り広げ、無事に俺たちは難関と言われたアナログゲームを制覇した

この様子を撮影した動画を投稿すると、なんと一週間と経たない内に100万再生を突破
実装石用玩具を開発する会社からオファーを受け、アドバイザー兼広報インフルエンサーとして
蛆ちゃんアスレチックゲームの開発に携わることになり、俺は暫らく多忙な日々を送ることになった
――――――――
「あ、あのニンゲンはいつ来るデス…?住処が…蛆ッコロでいっぱいデスゥ…!」
蛆実装の群れに埋め尽くされた狭いダンボールの住処で野良実装は呻いていた
「レフー。おなかすいたレフ」「はやくごはんとってくるレフー」
「き、きっとあのニンゲンがおやつを持ってくるデス…。我慢デスゥ…」
親実装は衰弱しているのか、住処から這い出す力も残っていないようだった
「もうおねえちゃもたべたレフ」「ママ、もううごけないレフ?」「しんぼうたまらんレフ」
一匹が親実装の足に噛り付くと、他の蛆実装も蠢く波のように襲い掛かる
「デ、デェエ…ッ!?ワタシの分の食料も与えて丈夫に育てた…のに。こんな…こん…な」
やがて蛆実装の群れが親実装を覆い尽くすと、苦しげな呻き声は消え
蛆実装たちの咀嚼音と小さなゲップの音だけが狭い住処に止むことなく響いていた
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