腐るぐらいなら焼くしかない
未明に発生した地震のせいで、北の国は全域大停電となった
マンションの10階に住む「」も、水道とガスとトイレが使えないしエレベーターは停まってるし、何より冷凍庫にある実装石の生肉がこのまま溶けていくのが惜しいと考えた。
とある人からようやく高い金を積んで入手した実装肉、北国で入手するには本州に赴くか個人で実装食業者から交渉するしかない
保健所の決まりで実装食はネット通販を禁じられているためである
…少し考えて、いつも通っている居酒屋のマスターにスマホで連絡を入れてから、真っ暗な非常階段を実装肉を持ってゆっくり降り、居酒屋に向かう
「いらっしゃい、悪いね…全部ダメになっちまったわ、で、これがそうなの?」
「ああ」
マスターにキロ数万円の実装肉を渡し、薄暗い店内のカウンター席に腰掛け
「何味がいいと思う?」
「」がマスターに尋ねると、塩とタレと行者ニンニク醤油味にするかと帰ってきた
数十分後、濃い雑草を刈った臭いが微かにする白っぽくてふにゃふにゃした脂身のような実装肉が、充分に熱した金網の上に静かに並べられた
金網の上の実装肉は、肉というよりホルモンのように肉汁が少なく、ジリジリと炭火で焦げ目が付いていく
そのうち、「」と同じようにマンション住みで心細い独身の常連客がぽつぽつと集まってきた
「マスター外真っ暗で信号も付かないでやんの…何焼いてるんすか?」
「これ?「」さんが持ってきた実装肉、本州の珍味だってさ」
常連客はめいめい冷凍庫から持ってきた味付き冷凍ジンギスカンや冷凍食品を抱えてた、ここなら調理できるだろうと持ったのだろう
「どうせ冷蔵庫の食材は捨てるだけだし、誰かご飯炊けるんなら炊き出しできるよな」
「あ、俺の車から電源引っ張るわ、歩いてすぐだしさ」
こうして北の歓楽街では、至る所に臨時の炊き出し場が誕生し、温かいおむすびと各種炭火肉を市民に振る舞ったのだった
なお一部の店では、牛鶏豚とも違う肉のような食材を食べたとSNSに書き込まれ、保健所が調査に乗り出したようだが、マスター以下常連客全てに半年間半額するサービスと引き換えに口外禁止を言い渡したため、真相は闇の中で分からずじまいだったそうな






