鑑賞刑
ある一人の犯罪者が逮捕され、本日彼に対しての判決が言い渡された
この男は元々はどこにでもいる普通の虐待派であった
しかし男はすぐに実装石では満足出来なくなってしまい虐待の対象を人間の子供や抵抗できない若い女性に切り替え
これまでに40人以上の殺人罪で起訴されたものの
「やりたいだけやったし死刑でもいいッスよ~」
と裁判所や留置所でもふざけにふざけた態度を取り続け
家族を殺された遺族は死刑だけでは飽き足りない、もっと苦しくて重い懲罰を与えてくれと涙ながらに訴え
司法はそれを受け入れ、男に死刑よりも重い鑑賞刑を下した
判決が下され数日後、男は留置所から別の部屋に入れられ
拘束具・手錠を外され、衣服を入念にチェックされた後で看守は男を部屋に置いて外に出た
その部屋には水族館を思わせる巨大な鏡の壁しかなく
唯一の出入り口にはドアノブすらなく、食事を差し入れる小さな窓だけが下に付いていた
一体この部屋は何なのか?個室とは言えどなぜ俺は自由にされているのか?男は考えながらも動こうとしたその時突然鏡の壁が明るくなって透明になり、壁の向こう・・つまり隣の部屋が見えたのであった
その鏡・・・マジックミラーの向こうが見えた途端男は一瞬だけ呆然としたが何かを理解した瞬間獣のような奇声を叫んだ
なぜならそのマジックミラーの向こうでは・・・
「さあミドリちゃ~ん起きたら最初になんて言うのかな~?」
『デス、おはようございますデス看守さん』
「はいよくできました、じゃあ顔を洗ってからご飯にしましょうね~」
壁の向こうで起こっている事
それは実装石が愛誤派の看守に世話をされて幸せに暮らしている部屋が丸見えになっていた
愛誤派が実装石を飼育している・・・
そんなのは無関心派や愛誤派から見れば大した事の無いモノに過ぎない
だが、この男のように骨の髄まで虐待精神が染み込んでいる人間にして見れば虐待派としてのプライドを徹底的に踏み躙る行為に過ぎなかった
「ぐぎゃああfljshfqlうぃえhf:え!!!!!!!何糞蟲如きdvgq:伊wrh幸せdhg:qrhghwp」
目の前で実装石がこの世の幸せを謳歌している姿を見せつけられ
更に発狂しながら殴り続けても傷一つ付かないマジックミラーに男の発狂は加速する事となった
こうして・・・何時間・・何日と実装石の幸せ愛護生活を見せつけられ、一切手出し出来ない現実に男は早くも根を上げた
「殺してくれええええええ!!殺してくれええええええ!!誰か俺を殺してくれえええええ!!」
今まで自分の力でどんな我儘を押し通し、思うがままに虐待と殺しを楽しんだ男はこの現状に苦しみ続け
やがて自分の服を脱いでそれで両耳を塞ぎ、スピーカーから聞こえてくる実装石の幸せそうな笑い声を殺し
マジックミラーとは反対側にダンゴムシのように丸まって目を背け続けた
しかしそうやって目を背け続けられたのも僅かな間だけ・・・
男の姿を監視していた看守は部屋の中央に頑丈な椅子を設置すると男を無理矢理椅子に固定し、更にヘッドフォンを男に付けて向こうの部屋の声をダイレクトで聞かせ
更に念の為に男の口にも拘束具を取り付けて舌を噛んで自殺しないように対処した
こうして男は今度こそ逃げられずに実装石の愛護生活を見せつけられて精神を徹底的に痛めつけられて苦しみ・・こうなってからやっと
(どうして俺は人殺しなんて馬鹿やっちまったんだ・・)
(どうして糞蟲で止めなかったんだ・・)
(糞蟲で止めて置けばこんなに苦しまなかったのに・・・)
と、今更ながらの後悔を始めていた
それから半年・・・
男は鑑賞刑の刑期である半年を終えて釈放されたのだがもうこの男には悪意も殺意も人の心も何も残って居なかった
男にとって生きる原動力であった加虐心や傲慢な精神はこの半年の間に徹底的に壊されてしまい
後に残ったのは廃人となった男の抜け殻に過ぎなかった
その後、この鑑賞刑に関して賛否両論こそあったものの
死を軽く見て反省の心の無い悪意の塊のような人間に対して
本当の意味で罪を償わせる事が出来ると言う政府の決断によって正式に採用され
現在までに11名の犯罪者がこの刑に服している






